うに空へまい上った。
 そこには、半ば貪《むさぼ》り啄《つつ》かれた兵士達の屍《しかばね》が散り散りに横たわっていた。顔面はさんざんに傷《そこな》われて見るかげもなくなっていた。
 雪は半ば解けかけていた。水が靴にしみ通ってきた。
 やかましく鳴き叫びながら、空に群がっている烏は、やがて、一町ほど向うの雪の上へおりて行った。
 兵士は、烏が雪をかきさがし、つついているのを見つけては、それを追っかけた。
 烏は、また、鳴き叫びながら、空に廻《ま》い上《あが》って、二三町さきへおりた。そこにも屍があった。兵士はそれを追っかけた。
 烏は、次第に遠く、一里も、二里も向うの方まで、雪の上におりながら逃げて行った。



底本:「昭和文学全集32 中短編小説集」小学館
   1989(平成1)年8月1日初版発行
底本の親本:「黒島伝治全集 第1巻」筑摩書房
   1970(昭和45)年4月初版発行
入力:大野裕
校正:Juki
2000年3月22日公開
2003年5月25日修正
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