渦巻ける烏の群
黒島伝治
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)外套《がいとう》にくるまって
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)防寒|外套《がいとう》の裾のあたりへ
※:外字
(例)サモ※[#「※」は「ワ」に濁点、21−3−9]ール
[#]:入力者注
(例)今晩は[#「ズラシテ」の注記]
×:伏せ字
(例)それは、××××なのだ。
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一
「アナタア、ザンパン、頂だい。」
子供達は青い眼を持っていた。そして、毛のすり切れてしまった破れ外套《がいとう》にくるまって、頭を襟の中に埋《うず》めるようにすくんでいた。娘もいた。少年もいた。靴が破れていた。そこへ、針のような雪がはみこんでいる。
松木は、防寒靴をはき、ズボンのポケットに両手を突きこんで、炊事場の入口に立っていた。
風に吹きつけられた雪が、窓《まど》硝子《ガラス》を押し破りそうに積りかかっていた。谷間の泉から湧き出る水は、その周囲に凍《い》てついて、氷の岩が出来ていた。それが、丁度、地下から突き出て来るように、一昨日よりは昨日、昨日よりは今日の方がより高く
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