、船が本土を出帆するまぎわになると、放り上げた猫が、荷揚場から、又船へ飛び乗ろうとしているのだった。それを見つけると船方は、早速、水荷い棒を取って、猫をめがけて殴った。ところが、そう力は入れなかったのに、棒が急所にあたったと見えて、猫は一度にころりと海の中に落ちて死んでしまった。というのだった。
「ほんに、可憐そうに!……」それを聞いてばあさんは沈みこんでしまった。



底本:「黒島傳治全集 第一巻」筑摩書房
   1970(昭和45年)年4月30日第1刷発行
入力:大野裕
校正:富田倫生
2000年10月16日公開
2000年11月7日修正
青空文庫作成ファイル:
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