れの女が肯きながら、ゆく。
 人はけっして彼を気違ひだとは言はない。「哲学者の乞食」と尊?称してゐる。

 また、足が妙な風にひッついてゐる醜さを、くるりと尻までまくって見せて、親の因果が報いたのだと、見物を意見してゐる乞食。みるみる、拡げた風呂敷の上に、面白いやうに銭が投げ込まれてゆく。
 かれらはけっして自ら乞ふてはゐないのである。しかも、十分にその目的を達し得てゐるから愉快である。



底本:「日本の名随筆85 貧」作品社
   1989(平成元)年11月25日第1刷発行
   1991(平成3)年9月1日第3刷発行
底本の親本:「添田唖蝉坊・知道著作集2 浅草底流記」刀水書房
   1982(昭和57)年8月25日第1刷発行
※疑問箇所の確認にあたっては、底本の親本を参照しました。
※拗促音を小書きする扱いは、底本通りです。
入力:渡邉つよし
校正:門田裕志
2001年9月20日公開
2004年7月21日修正
青空文庫作成ファイル:
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