れは御辯解が出来るなら、其筋でなさつたら好いでせう。」
「わたくしが何もフランスにしろ、外の国にしろ、余所の国に対して、どうと云ふ考のないことは、あなただつてお分かりでせうがなあ。」
大ぶ話の調子が変つてゐるので、夫人は戸の外で立聞をしてゐる。そしてかう思つてゐる。「なんだつて、此頃は二人で喧嘩ばかりしてゐるのだらう。変な事になつたものだ。」とう/\夫人は戸を開けて這入つた。
「あなた、なぜそんなに宅をお困らせなさいますの。こんな年寄りを。」
「好いよ/\、グラツシヤア。お前なんぞが出なくても好いよ。ほんに/\己は気でも違はなければ好いが。」
「ねえ、あなた。ミハイル・イワノヰツチユさん。宅は新聞の事で、随分色々な目に逢つてゐますのですから、どうぞあなたまでが、そんなに仰やらないで。」
「いゝえ、奥さん、どうもそれは違ひますなあ。わたくしが御主人をおいぢめ申すのではありません。御主人がわたくし共をおいぢめになりますので。」
「あら。そんな事を仰やつたつて、わたくし本当だとは思ひません。蠅一匹殺さない宅の事でございますもの。」
プラトンの出る地方庁の事務室にも、自宅にも電話が掛かつて
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