てないのは、一号だつてありますまい。何も差支なささうなものですが。」
「さあ。差支ないと云へば、ないやうなものですが、どうでせう、よさせるわけには行きませんかなあ。お互の為めですが。実は今見てゐる原稿にも、革命何事ぞ、顧みずして可なりと云ふやうな文句があるです。クリユキンといふ先生は、なぜ不用心な物の言ひやうをするのでせう。」手に持つてゐる原稿を振り廻してかう云つてゐる。
二人は暫く言ひ争つてゐたが、なか/\妥協が出来なかつた。しまひにプラトンがかう云つた。
「なる程、革命といふものが事実有つて見れば、その事を丸で言はないわけには行かないかも知れませんね。併し老人が折り入つて願ふのですから、どうにか御都合は出来ますまいかなあ。詰まりなんとか別な詞で言ふわけには行きますまいかなあ。」
かう云ひ出したので、此対話の終には、将来革命といふ詞の代りに、カタストロフエといふ詞を使はせようと相談した。此詞も万已むを得ざる場合に限つて使はせようと云ふのである。
さて此対話の跡で、双方に多少の不満足が残つた。交際が次第に冷かになつた。終には毎日衝突をする。誤解が重《かさ》なる。とう/\本物のカタ
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