はカルルもはじけさうにはないのですからね。」
「まあ、好かつたのね」とエレナが云つた。
イワンは落ち着いて云つた。「持主の云ふ通りだ。どうしても経済的問題が先に立つのだて。」
己は熱心に、成るたけ大きい声をして云つた。「君。待つてゐ給へ。兎に角僕がこれから急いで君の上役の所へ駆け付けて見よう。どうせ我々がこゝで彼此云つても埒《らち》は明かないから。」
イワンが云つた。「僕もさう思ふ。ところでこの不景気な時で見れば、どうしても金銭上の辨償をせずに、※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]の腹を切り開ける事は出来まいよ。そこでかう云ふ問題が起る。持主が※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]の代価として幾ら請求するかと云ふのだ。この問題に次いで、直ぐに第二の問題が起る。その金を誰が払ふかと云ふのだ。君も御承知の通り、僕は富豪ではないからね。」
己は遠慮勝に云つて見た。「どうだらう。俸給の内から少しづゝ払ふわけには行くまいかね。」
※[#「魚+王の中の空白部に口が四つ」、第3水準1−94−55]の持主は急に己の詞を遮つた。「この※[#
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