をふみしだく蹄鉄《ていてつ》が、敷石《しきいし》にあたって鳴《な》りわたる。みんな、おしあいへしあいのありさまだ。だが、何か食べたいなあ。ほんの切れっぱしでもいいんだがなあ。おまけに指《ゆび》さきまでが、急《きゅう》にいたくなってきた。おまわりさんがすれちがったが、気がつかないふりをして、そっぽを向いた。
おや、また往来《おうらい》だ。なんてまあ広い通りだろう。うかうかすると、ひきころされてしまうぞ。なにしろ、みんな夢中《むちゅう》で、わめいたり、走ったり、車をとばしたりしているからな。おまけにあかりの多いことといったら。どこを見ても、あかりだらけだ。だが、あれはなんだろう。やあ、なんて大きなガラスだ。ガラスの向こうは部屋《へや》になっていて、部屋の中には、天井《てんじょう》までとどきそうな木が立っている。ははあ、クリスマス・ツリーだな。そのクリスマス・ツリーには、あかりや、金紙《きんがみ》や、りんごが、どっさりつるさがっていて、そのまわりは、人形《にんぎょう》やおもちゃの馬が、ぎっしり並《なら》べてある。晴《は》れ着《ぎ》を着たきれいな子どもたちが、部屋じゅうをかけまわって、笑《わら》ったり、遊《あそ》んだり、何か飲んだり、食べたりしている。おや、あの女の子が、男の子とおどりだしたぞ。なんてかわいい子だろう。ああ、音楽《おんがく》も、ガラスごしに聞えてくる。……
少年は、あきれて、じっと見つめているうちに、思わずにこにこしだしたが、そのうちにもう、足の指《ゆび》までいたくなってきた。手の指は、まっかになって、まげることもできないし、ちょっと動かしても、ずきんといたい。
そこで少年は、自分の指が、そんなにいたいほどかじかんでいるのに気がついて、おいおい泣《な》きながら、さきへかけだした。すると、またそこにも、ガラスの向こうに部屋《へや》があって、やっぱりクリスマス・ツリーが立っている。プラムのはいったのや、赤いのや、黄《き》いろいのや、いろんなお菓子《かし》が並《なら》んでいる。その前には、りっぱな奥《おく》さんが四人すわっていて、はいってくる人ごとに、お菓子をやっている。入口のドアは、たえまなしにあいて、おおぜいの人が往来《おうらい》からはいって行く。少年はこっそりそばへよって、いきなりドアをあけて、中へはいった。それを見つけたときの、おとなたちのさわぎよう
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