hロヴィッチをみつめながら、スメルジャコフがしっかりした調子で答えた。
馬車がごとんと一つ揺れると、走り出した。旅人の心は朦朧《もうろう》としていたけれど、彼はあたりの野らや、丘や、木立ちや、晴れわたった空を高く飛び過ぎる雁《かり》の群れなどを、むさぼるように見入るのであった。と、急に彼は心がさわやかになった。で、御者に話しかけてみると、その百姓の答えがひどくおもしろいように思われたが、一、二分もたってから考えてみると、それはただ耳もとを通り過ぎただけで、実際のところ、彼は百姓の答えを少しも聞いてはいなかったのである。彼は口をつぐんでしまったが、それでいて非常に好い気持であった。空気は清く澄み、しっとりとしてすがすがしく空は美しく晴れわたっていた。ふとアリョーシャとカテリーナ・イワーノヴナの姿が、彼の頭をかすめたが、彼はただ静かにほほえんだだけで、静かにそのなつかしい幻影を吹き消してしまった。『まだまだあの連中の時代だろうさ』と彼は考えた。駅はただ馬を換えるだけでいちはやく通り過ぎて、ひたすらワロヴィヤをさして急いだ。『なぜ賢い人はちょっと話してもおもしろいんだ? あいつはなんのつも
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