蜴魔ネ用だからな、しかしこちらの都合が……どうもそうしちゃいられないんだ……。な、あの森はベギーチェフとジャーチキンの二区にまたがって、淋しい所にあるんだ。ところで、マスロフという商人の親子が木を切らしてくれと言うんだが、たった、たった八千ルーブルより出しおらんのだ、去年ついた買い手は破談になったけれど、一万二千ルーブル出すと言いおったよ、それはここの者じゃないんだ――そこにいわくがあるのだ、なにしろ、ここの人間には、今とても売れ口がないのだよ。このマスロフというのが親子とも十万|分限《ぶげん》のやりてで、自分が値をつけたら、どんなことがあっても取らにゃ承知せんというやつで、こちらの商人で、この親子にたち打ちのできる者が一人もないのだ。ところが、先週の木曜日に、不意にイリンスコエの坊さんが手紙で、ゴルスツキンがやって来たことを知らせてくれたのだよ、これもやはりちょっとした商人で、わしは前から知っとるが、一つありがたいことは、この男がこちらの者でなくて、ポグレキウォの人間だってことなのさ、つまりマスロフなんか眼中においてないってわけなんだ、なにしろこの町の者じゃないからな。そこで、あの森
前へ 次へ
全844ページ中830ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ドストエフスキー フィヨードル・ミハイロヴィチ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング