ワり何かしら人か物かがどこかに突っ立っているといったあんばいなのである。たとえば、よくあることだが、何か眼の前へ突き出ているのに、話か仕事に夢中になっていて長いあいだ気がつかないでいるけれど、なんだか妙に気持がいらいらして、まるで苦しくさえなる、そのうちにやっと気がついて、その邪魔物を取りのぞくのだが、それはたいていの場合つまらないばかげた物で、――どこかとんでもない場所へ置き忘れた品物とか、床の上へ落ちたハンカチとか、書棚へかたづけ忘れた書物とか、そんなような物である。やがてイワン・フョードロヴィッチは恐ろしく不快ないらだたしい気分で、父の家までたどりついたが、耳門《くぐり》からおよそ十五歩ばかり離れたところから、ふと門を眺めた時、自分の心を苦しめ悩ましていた原因をたちまち察知したのである。
 門そばのベンチに、下男のスメルジャコフが腰をかけて、夕涼みをしていたのだ。イワン・フョードロヴィッチはそれを一目見るなり、自分の心の底には、この下男のスメルジャコフが潜んでいた。それがなんとも不愉快でたまらなかったのだ、ということに気がついた。すると、すべてが急にぱっと照らし出されて、明瞭にな
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