ユを否定するようにはできていないのだ。いわんや、そのような生死に関する恐ろしい瞬間に、――最も恐ろしい、根本的な、苦しい精神的疑問の湧き起こった瞬間に、自由な心の決定にのみ頼って行くようにはできていないのだ。おまえは自分の言行が書物に記録されて、時の窮み、地の果てまで伝えられることを知っていたので、すべての人間も自分の例にならって、奇跡を必要としないで神と共に暮らすだろう、そんなことを当てにしていたのだ。けれども、人間は奇跡を否定すると同時に、ただちに神をも否定する。なぜならば、人間は神よりもむしろ奇跡を求めているのだから、――この理《ことわり》をおまえは知らなかったのだ。人間というものは奇跡なくして生きることができないから、自分で勝手に新しい奇跡を作り出して、果ては祈祷師《きとうし》の奇跡や、巫女《みこ》の妖術《ようじゅつ》まで信ずるようになる。そして相手が百倍もひどい悪党で、耶教徒で、不信心者であっても意としないのだ。おまえは多くの者が、※[#始め二重括弧、1−2−54]十字架からおりてみろ、そうしたらおまえが神であることを信じてやる※[#終わり二重括弧、1−2−55]と、ひやかし
前へ
次へ
全844ページ中761ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ドストエフスキー フィヨードル・ミハイロヴィチ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング