トいるだけのことしか知らないんだ!」
「兄さんは何を知っているのです!」
「僕にはなんにもわからないのだ」とうわごとでも言っているように、イワンは語をついだ、「それに今となっては、何一つ理解しようとも思わないよ。僕はただ事実というものにとどまるつもりだ。僕はもうずっと前から理解などすまいと決心したのだ。何か理解しようと思うと、すぐに事実を曲げたくなるから、それで僕は事実の上にとどまろうと決心したわけだ」
「なんだって、兄さんは僕を試すのです?」とアリョーシャは緊張した調子で悲しそうに叫んだ、「いいかげんにして言ってくれませんか?」
「もちろん、言うとも、言おうと思えばこそ、ここまで話を運んできたんだ。おまえは僕にとって大切な人間だから、僕はおまえを見のがしたくないのだ。あのゾシマ長老なんかに譲りはしないよ」
イワンはちょっと口をつぐんだが、その顔は急にひどく沈んできた。
「さあ、聞いてくれ、僕は鮮明を期するために、子供のことばかり例にとったんだ。この地球を表面から核心まで浸している一般人類の涙については、もう何も言わないことにする。僕はわざと論題をせばめたのだ。僕は南京虫《ナンキンむ
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