のであるということに全く同感ではあるが、せっかくもう書いたことでもあるから、これはこのままにしておこう。
 さて、いよいよ本文にとりかかろう。
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 第一篇 ある家の歴史


   一 フョードル・パーヴロヴィッチ・カラマゾフ

 アレクセイ・フョードロヴィッチ・カラマゾフは、この郡の地主フョードル・パーヴロヴィッチ・カラマゾフの三男で、父のフョードルは、今からちょうど十三年前に悲劇的な陰惨な最後を遂げたために、そのころ(いや、今でもやはりこちらでは時おり噂《うわさ》にのぼる)非常に評判の高かった人物であるが、この事件についてはいずれしかるべきところにおいてお話しすることにしよう。ここでは単にこの『地主』が(当地では彼のことをこう呼んでいたが、その実、彼は一生涯ほとんど自分の持ち村で暮らしたことがなかった)かなりちょいちょい見受けるには見受けるが、一風変わった型の人間であった、というだけにとどめておこう。つまり、やくざで放埒《ほうらつ》なばかりではなく、それと同時にわけのわからない人間のタイプ――もっとも、同じわけのわからない連中の中でも、自分の財産に関する細々した事務を
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