ということもなしに、一目見るなり、アリョーシャの心にちらついて、彼はこれを後になって思い出した)部屋の中に誰もほかに男のいないところから察するに、この男が戸の中から『いったい、誰?』と叫んだものらしかった。しかし、アリョーシャがはいったとき、彼は今まで腰かけていたベンチから、いきなり飛びあがって、穴だらけのナプキンであわてて口のあたりを拭きながら、アリョーシャのほうへ飛んで来た。
「お坊さんがお寺からお布施をもらいに来たんだわ、選《よ》りに選《よ》ってこんなところへ!」左の隅に立っていた娘が、大きな声で言った。すると、アリョーシャのそばへ飛んで来た男は、いきなり、ぐるりと踵《かかと》で、娘のほうへ身をかわして、興奮して、妙にちぎれちぎれな調子で答えた。
「そうじゃないよ、ワルワーラさん、それはあなたの勘違いですよ! ところで、私のほうからも、お伺いしますが」彼は再びアリョーシャのほうをひょいと振り向いた、「どういうわけであなたはお越しなすったんでございますか、……この内まで?」
 アリョーシャはしげしげと相手を眺めた。はじめて彼はこの男を見たのであった。この男は、なんとなく角ばっていて
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