ヨ来たんじゃあるまいな? いったいなんのためにやって来たんだろう?」
「お父さん、なんですか! なんだってそんなことをおっしゃるんです?」とアリョーシャはひどく口ごもった。
「あいつは金をくれとは言わん、それは本当だ。しかし、それにしても、わしからは鐚一文《びたいちもん》取れるわけじゃないんだから。わしはな、アレクセイさん、この世にできるだけ長く暮らすつもりですよ。このことは、おまえたちに心得ておいてもらいたい。だからさ、一カペイカの金でもわしには大切なんだ。わしが長生きをすればするほど、なおさら大切になっていくんでの。」黄色い夏の麻布で作った大きな脂《あぶら》じみた外套のポケットに両手をつき入れて、隅から隅へと部屋を歩き回りながら、彼はことばを続けた、「今のところ、わしもまだようやく五十五だから男の仲間だが、まだこれからさき二十年くらいは男の仲間でいたいものだ。しかし、そうなると年をとって――きたならしくなるから、女子《おなご》どもが好きこのんでわしのそばへ寄りついてはくれなくなる。さあ、ここで必要になってくるのは金じゃがな。だから、今こうやって、上へ上へと蓄めこんでおるのじゃ、それ
前へ
次へ
全844ページ中500ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ドストエフスキー フィヨードル・ミハイロヴィチ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング