`は口をゆがめながら言った。
「わしはあの人に行水まで使わしてあげただに……わしに道ならぬ仕打ちをしただよ!」とグリゴリイはくり返した。
「勝手なことを言ってろ、おれがもし兄貴を引き放さなかったものなら、ほんとに殺してしまったかもしれないぜ、あんなイソップ爺《じじい》に手間暇がかかるもんか!」とイワン・フョードロヴィッチがアリョーシャにささやいた。
「えい、とんでもないことを!」とアリョーシャが叫んだ。
「何がとんでもないんだ?」と、やはり小声で、イワンはいまいましそうに顔をゆがめながらささやいた。
「毒蛇が毒蛇を呑《の》むまでのことさ、結局、両方ともそこへ落ちて行くんだよ!」
 アリョーシャはぎくりとした。
「だが、もちろんおれは人殺しなんかさせやしないよ。今だってさせなかったようにさ。アリョーシャ、おまえここにおってくれ、おれは庭を少し散歩して来るからな、なんだか頭が痛くなってきたんだ」
 アリョーシャは父の寝室へはいって、枕もとの衝立《ついたて》の陰に一時間ばかり坐っていた。と、不意に老人が眼を見開いて、長いこと無言のまま、じっとアリョーシャを見つめていた。それは何か思い出そうと
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