謔チたのだ。はたしてその鍵はフョードル・パーヴロヴィッチのポケットにはいっていた。どの部屋もやはり窓はすっかり閉めきってあった。つまるところ、どこにもグルーシェンカのはいって来た口も、飛び出して行った穴もなかったのである。
「あいつを取り押えろ!」と、ドミトリイの姿を再び見つけると同時に、フョードル・パーヴロヴィッチが金切り声で叫び出した。「あいつはわしの寝室で金を盗みおったのだ!」そういうなり、彼はイワンの手をもぎ放して、またもやドミトリイに飛びかかって行った。しかしドミトリイは、両手を振りかざすと共に、いきなり老人の両の鬢《びん》に残っているまばらな髪をひっつかんで、ぐいと引き寄せざま、激しい地響きを立てて床に投げとばした。そして打ち倒れた父の顔を、いきなり二つ三つ靴の踵《かかと》で蹴《け》とばしたのである。老人は鋭い声で悲鳴をあげた。イワン・フョードロヴィッチは、兄ドミトリイほどの腕力はなかったけれど、両手で兄を抱き止めて、やっとのことで父親からもぎ放した。アリョーシャも頼りない力を振り絞って、前から兄に抱きつきながら、それに加勢した。
「気でもちがったのじゃないのか、ほんとに殺
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