チていたが、まっさおになって、ぶるぶる震えながら、ぴったりとフョードル・パーヴロヴィッチの方へすり寄って来た。
「あいつはここにいるぞ!」とドミトリイ・フョードロヴィッチが叫んだ。「おれは今、あいつがこの家の方へ曲がったのを、ちゃんと見とどけたんだ、だが追いつくことができなかっただけなんだ、さあ、どこにいる? どこにいる?」
 この『あいつはここにいる!』という叫び声が、フョードル・パーヴロヴィッチに異常な感銘を与えた。そして彼のすべての驚愕《きょうがく》はどこかへ飛んでしまった。
「そいつを取り押えろ、取り押えろ!」とわめきながら、彼はドミトリイ・フョードロヴィッチのあとから転げるように駆け出した。グリゴリイはそのあいだに床から立ち上がったが、まだ人心地がつかない様子であった。イワン・フョードロヴィッチとアリョーシャとは父の跡を追って駆け出した。三つ目の部屋で何かが床へ落ちて、がらがらと砕ける音がした。それは、大理石の台に載せてあったガラスの大花びん(あまり高価なものではない)で、ドミトリイがそばを駆け抜ける拍子に、ひっかけて倒したのである。
「おおい!」と老人はわめき声を立てた。「
前へ 次へ
全844ページ中402ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ドストエフスキー フィヨードル・ミハイロヴィチ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング