プの中を吟味したり、かがみこんでのぞいたり、一匙すくって明りに透かして見たりするというのであった。
「油虫でもおるのか?」とグリゴリイが聞く。
「きっと蠅《はえ》でしょうよ」とマルファが口をいれる。
 潔癖な少年は一度も返事をしなかったが、パンであれ、肉であれ、すべての食物について同じようなことをするのであった。何でも食物の切れをフォークにさして、明かりの方へ持っていくと、まるで顕微鏡でものぞくように子細に検査をして、長いあいだ躊躇《ちゅうちょ》していてから、やっと思いきって口の中へ入れるという風であった。それを見るとグリゴリイは『へん、まるで御大身のお坊ちゃまだよ』とつぶやいたものだ。フョードル・パーヴロヴィッチはスメルジャコフのこうした新しい性分を聞き知ると、さっそく料理人に仕立てようと思い立って、モスクワへ修業にやった。彼は数年のあいだ修業をして、帰って来た時にはすっかり面変わりがしていた。急にまるで年に似合わずひどく老けこんで、皺《しわ》が寄り、黄色くなったところは、まるで去勢者のようであった。性質のほうはモスクワへ行く前とほとんど変わりがなかった。相変わらず人づきが悪く、誰と
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