い! さあ、この忌まわしい、蠅《はえ》のたかった原っぱから、いよいよおれの悲劇へ移ることにしよう。とはいっても、これもやっぱり蠅のたかった、つまり卑劣なことだらけの原っぱだよ。それは、親爺がさっき、無垢の少女を誘惑したとか、なんとか、でたらめを言いおった、あのことなんだが、事実、おれの悲劇の中にはそいつがあったんだ。もっともたった一度っきりで、それも成立はしなかったんだけど。さっきでたらめを言っておれを決めつけた老いぼれは、その実この話は知ってやしないんだよ。今までおれは誰にも話したことはないんだから。今おまえに明かすのがそもそもの初めだよ、もっともイワンは別だよ、イワンは何もかも知っている。おまえよりずっと前から知っているのだ。しかしイワンは――墓場だよ」
「イワンが墓場ですって?」
「うん」
 アリョーシャは異常な注意をもって聞き耳を立てた。
「おれはその戦列大隊で見習士官として勤務していたのだけれど、まるで流刑囚かなんぞのように、監視を受けたといってもいいありさまだった。しかし、町では恐ろしく優遇されたよ。おれが湯水のように金を使ったものだから、財産家だと思いこまれてしまったのだ
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