歌《うた》でもって切り出したいのだ。An die Freude でもって! だが、おれはドイツ語は知らないんだ。ただこの An die Freude だけ知ってるのさ。しかし、おれが酔っ払ってこんなことを言うと思わないでくれ。おれはちっとも酔っ払ってなんかいないんだよ。コニャクはあるにはあるけれど、酔うには二本なくちゃなあ。

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サイリーナスは紅《あか》ら顔して
つまずきやすき驢馬《ろば》に乗り……
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 だが、おれはこのびんの四半分も飲んじゃあいないのだからサイリーナスじゃない。サイリーナスじゃないが強者《シリョン》だよ。だって、もう永久に覚悟の臍《ほぞ》が決まってるんだからなあ。いや、こんな地口は許してくんなよ。今日は地口どころじゃない、まだいろんなことを許してくれなくちゃならないんだよ。だが心配することはないよ、おれはへたに潤色を施してるんじゃない。まじめなことを話しているのだ。さっそく問題に移るよ。おれは自分の魂をユダヤ人みたいなものにしやしない。が、待てよ、あれはどうだったけな……」
 彼は頭を擡《もた》げて考えこんでいたが、不意
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