えていたところだ……」
 アリョーシャのほうでも嬉しかったが、ただどうして籬を越えたものかと途方に暮れた。しかし、『ミーチャ』がたくましい手で弟の肘《ひじ》をつかんで、飛び越えられるように助けてくれた。アリョーシャは法衣の裾をからげると、町のはだし小僧のような身軽さで、ひょいと籬を飛び越した。
「さあ行こう!」有頂天なささやきがミーチャの咽喉《のど》を漏れた。
「どこへよ!」とアリョーシャも、ぐるりを見回して自分の立っているところがまるっきりがらんとした庭で、二人のほかには誰もいないのを見て、ささやいた。それは小さな庭であったが、それでも、持ち主の家の建っているところまでは、そこから五十歩以上もあった、「ここには誰もいやしないのに、なんだってそんな小さな声をするの?」
「なんで小さな声をするって? えい、くそ!」と、ドミトリイ・フョードロヴィッチは不意に思いきり声を張りあげて叫んだ、「なるほど、なんだって小さな声なんか出したのだろう。なあ、人間の本性なんて、こういうつじつまの合わんことをしでかすものだよ。おれは内緒でここへ忍びこんで、ある秘密を見張っているんだ。わけはあとで話すが、それ
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