のついたものであった。アリョーシャはもとより、この最後の事実については、ゆくりなくも、町のことならば何から何まで知っている例のラキーチンから聞かされたのであったが、いうまでもなく、聞くと同時に、すぐにまた忘れてしまった。けれど今、隣家の庭の前まで来たとき、ふっとこの裳裾のことを思い出すと、それまで物思いに沈んで、うなだれていた頭をひょいと振り上げた……と、実に思いもかけぬ人に出くわした。
隣家の庭の籬の向こうから、兄のドミトリイ・フョードロヴィッチが何か踏み台に乗って胸から上を現わしていた。そして、しきりに合図をしながら彼を手招きしているが、明らかに彼は、大声に呼ぶどころか、人に聞かれはしないかとの心配から、口に出してはひと言も物を言わなかった。アリョーシャはすぐに籬のそばへ駆け寄った。
「ああ、おまえのほうからこちらをふり向いてくれてよかった。でなかったら、もう少しでおまえを大声で呼ぶところだったよ」と、さも嬉しそうに、ドミトリイ・フョードロヴィッチはあわただしくささやいた、「さあ、ここへ上がって来いよ! 早く! ああ、ほんとにおまえが来てくれてよかった。おれは今もおまえのことを考
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