けではない。そんなことは彼にはありえなかった。それどころか、恐ろしく心配はしながらも、彼はさっそく修道院長の勝手口へ行って、父が上でしでかした一部始終を聞き取ったのであった。それから彼は、今自分を悩ましている問題も道々なんとか解決がつくだろうという望みをいだきながら、ともかく、町をさして急いだのであった。前もって断わっておくが、『枕も蒲団も引っかついで』家へ帰って来いとの父の命令もわめき声も、彼にはいっこう恐ろしくはなかった。ああしてぎょうさんに聞こえよがしにわめき立てて帰宅せよとの命令は、ただ単にいわば『羽目をはずした』出まかせの、むしろその場の潤色に用いられたものにすぎないことを彼は百も承知していたのである。たとえばつい最近、この町のさる商人が、自分の命名日にあまり飲み過ぎたため、もうウォトカはよしなさいと言われたのに腹を立てたあげく、客の前をもはばからず、突然、自分自身の食器を打ち砕いたり、自分や妻君の着物を引き裂いたり、家具や、果ては屋内のガラスまでたたきこわしたものだが、これも同じく潤色のためで、今日父が演じたのも、これと同巧異曲の一幕であった。もちろんその食らい酔った商人も
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