ル・パーヴロヴィッチは思いきりくだらない話をちょっとして、すぐにさがらしてしまう。どうかすると別れぎわに、ひやかしたり冗談口をたたいたりすることもある。そして御当人はぺっと唾《つば》を吐いて横になる。と、もう聖人のような眠りに落ちてしまうのである。アリョーシャが帰って来たときも、ちょっとこれに似寄ったことがフョードル・パーヴロヴィッチの心に起こった。アリョーシャは『いっしょに住んで、何もかも見ておりながら、ちっともとがめ立てをしない』という点で、彼の『心を突き刺した』のである。あまつさえ、アリョーシャは、父にとってついぞこれまで覚えのないものをもたらした。それは、この老父に対して少しも軽蔑の念をいだかないばかりか、反対に、それほどの価値もない父にいつも優しく、しかも全く自然ですなおな愛慕の情を寄せるのであった。これまで家庭というものを持たず、ただ『邪淫《じゃいん》』のみを愛してきた、老放蕩児にとって、こういうことはすべて思いもかけぬ賜物であった。アリョーシャが去って行ったのち、彼は今まで理解しようとも思わなかったあるものを理解した、と肚《はら》の中で告白した。
 グリゴリイがフョードル
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