轣tの中が知りたいんだ」
「なんのためにいらっしゃるかは、御自分で御承知でございましょう、わたくしの肚の中などを詮索《せんさく》なさることはございますまいよ、お兄さんはただ腹立ちまぎれにもいらっしゃいましょうし、もしわたくしが病気でもすれば、あの疑ぐり深い御性分のことですから、もしやという心をお起こしになって、昨日のように我慢しきれなくなって、部屋の中まで捜しにいらっしゃるかもしれませんよ――もしやあの女が自分に隠れてはいりこんでやしないかとお思いになって。そのうえお兄さんはフョードル・パーヴロヴィッチのところに、三千ルーブルのお金を入れた大きな封筒が、ちゃんと用意してあることも、やっぱり御存じになっています、その封筒を三つとも封印をした上に紐《ひも》でゆわえて、『わが天使なるグルーシェンカへ、もしわがもとに来たりなば』と御自分の手でお書きになったのですが、それから二、三日たってまた『ひな鳥へ』と書き添えられました、これがそもそも疑わしいのでございますよ」
「くだらないことだ!」イワン・フョードロヴィッチはほとんどわれを忘れてどなった。「ドミトリイは金を盗むような男じゃない、おまけに、そのついでに親爺を殺すなんてはずはない、昨日のような場合には、癇癪《かんしゃく》もちのばかが夢中になったことだから、グルーシェンカのために親爺を殺すようなことがあるが、強盗なんぞに出かけてたまるものか!」
「でも、あのかたは今、非常にお金の入用に迫られていらっしゃいますよ、イワン・フョードロヴィッチ、どんなにお困りになっているか、あなたは御存じないのでございましょう」スメルジャコフはどこまでも落ち着き払って、いちじるしくはっきりした調子でこう説明した。「そのうえ、お兄さんはその三千ルーブルの金を、まるで自分のものかなんぞのように思っていらっしゃいます、『親爺はまだちょうど三千ルーブルだけおれに支払う義務があるのだ』と御自分の口からわたくしにおっしゃいました、それにイワン・フョードロヴィッチ、もう一つ確かな真理があるのですよ、ようく御自分で判断して御覧なさいまし、これはほとんど間違いのない話ですが、アグラフェーナ・アレクサンドロヴナは、自分でその気にさえなられるなら、わけなくあのかたを――つまりフョードル・パーヴロヴィッチをまるめこんで結婚してしまいますよ、それに旦那のほうだって案外その
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