繧ェるまでこするのでございます、そして何かお呪《まじな》いを唱えながら、びんに残っている侵酒を病人に飲ませます、もっとも、すっかりではございません、そんなときにはいつも少々残しておいて、自分でも飲むのでございます、そうして二人とも、酒のいけぬ人が酔っ払ったように、そのままそこに倒れてしまって、かなり長いあいだぐっすり寝こむのでございますよ、グリゴリイ・ワシーリエヴィッチは眼をさませば、いつも病気がなおっていますが、マルファ・イグナーチエヴナは眼をさました後できまって頭痛がするのでございます、こういうわけでして、もしマルファ・イグナーチエヴナが明日本当に療治をすれば、あの夫婦が何か物音を聞きつけて、ドミトリイ・フョードロヴィッチを入れないようにするなぞということは、どうもおぼつかない話でございますよ、きっと寝こんでしまいますから」
「なんというばからしい話だ! 何もかもわざとのように、重なり合うじゃないか、貴様は癲癇《てんかん》を起こすし、グリゴリイ夫婦は覚えなしに寝てしまうなんて!」とイワン・フョードロヴィッチは叫んだ、「ひょっと貴様がわざとそんな段取りにしくもうってんじゃないかい?」不意に彼はこう口をすべらして、険しく眉《まゆ》をひそめた。
「どうしてわたくしが、そんな段取りなんかしくみましょう……それに、何もかもドミトリイ・フョードロヴィッチのお考え一つで、どうともなるというやさきに、なんのためにそんなことをいたしましょう……あの人が何かしでかそうとお思いになれば、何もかもそのとおりにしでかしなさるのでございますよ、本当にめっそうもない、わたくしがあの人の手引きをして、旦那の所へ踏みこませるなんて、そんなことがあってよいものですか」
「じゃ、なんのために兄貴が親爺《おやじ》の所へやって来るんだ、それもこっそりやって来るなんて? アグラフェーナ・アレクサンドロヴナはけっしてここへやって来やしないと、貴様自身言ってるじゃないか」と、イワン・フョードロヴィッチは憤りのために顔色を変えて語をついだ、「貴様の口からもそれを聞くし、僕もここに滞在しているあいだにちゃんと見抜いてしまったんだが、親爺はただ夢を見ているだけで、あの淫売女《じごく》はけっしてやって来やしないんだ、あの女が来もしないのに、なんのために兄貴が親爺の所へあばれこむんだ、さあ言ってみろ! 僕は貴様の肚《は
前へ
次へ
全422ページ中407ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ドストエフスキー フィヨードル・ミハイロヴィチ の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング