、まじめにあの人と話したのですよ」とアリョーシャはきっぱり言った。
「こんな場合、まじめな話なんてあり得ないことですわ、考えることもできないことですわ。何よりまず、わたしこれからはもうけっしてあなたに家へ来ていただきたくないの。第二に、わたしはあの子を連れてこの町を立ってしまいますから、そのおつもりで」
「どうしてまた」とアリョーシャは言った。「だってあの話はまだずっと先のことでしょう、まだ一年半から待たなくちゃならないんですからね」
「そりゃあね、アレクセイさん、それに違いありませんけどね、その一年半のあいだに、あなたとリーズは幾千度となく、喧嘩したり別れたりなさるわ。けれど、わたしは言いようのないほど不仕合わせな女なのですからね。みんなばかばかしいことには相違ありませんが、それにしても、びっくりしてしまいました。今わたしはちょうど大詰めの幕のファームソフ(「知恵の悲しみ」の人形)のようでございます。そしてあなたがチャーツキイ、あの子がソフィヤの役割でございます。おまけにまあどうしたというのでしょうね、わたしがあなたをお待ち受けしようと思って、わざわざこの階段のとこへ来てみると、ちょうどそこへあの芝居の大切な場面が何から何までみんな階段の上で起こってるじゃありませんか。わたしはすっかり聞いてしまいましたが、本当にじっとその場に立っていられないくらいでしたの。昨夜の恐ろしい熱病だって、さっきのヒステリイだって、もとはといえば、みんなここにあるのですもの! 娘の恋は母親の死です。もう棺《かん》にでもはいってしまいそうですよ。ああ、それからもう一つ用事がありました。これがいちばん大事なことなんですの。あの子が差し上げたとかいう手紙、いったいどんなのですか、ちょっと見せてください、今ここで!」
「いいえ、そんな必要はありません、それよりカテリーナさんの容体はどうなんです、僕それが聞きたくてたまらないのです」
「やっぱりうなされながら寝てらっしゃいます。まだお気がつかれないんですよ。伯母さんたちは来ていても、ただ吐息をついて、わたしに威張りちらすばかりなんですからね。ヘルツェンシュトゥベも来るには来ましたが、もうすっかりびっくりしてしまって、かえって、あのかたのほうへ手当てをしてあげたり、介抱したりするのにあたし見当がつかなくて困ったくらいなんです。別の医者でも迎えにやろう
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