この土を見すてようとしているのです。僕がどんなにこの人と精神的に結びついているか、それがあなたにわかってくださったらなあ! あなたにわかってくださったらなあ! しかも、僕は今、たった一人でとり残されようとしているのです……僕はあなたのところへ来ますとも、リーズさん。これからさきいっしょにいることにしようね……」
「ええ、いっしょにね、いっしょにね! これから一生涯いつもいっしょにいましょうね。ちょっと、わたしを接吻してくださらない、わたし許すわ」
アリョーシャは彼女を接吻した。
「さあ、もういらっしゃい、では、御機嫌よう!(彼女は十字を切った)。早く生きていられるうちにあのかた[#「あのかた」に傍点]のところに行っておあげなさい。わたしすっかりあなたを引き止めてしまったわね。今わたし、あの人とあなたのためにお祈りすることにするわ。アリョーシャ、わたしたちは幸福でいましょうね? ね、幸福になれますわね?」
「なれますとも、リーズさん」
リーズの部屋を出たアリョーシャは、母夫人のところへ寄らないほうがよいと思ったので、夫人には別れの挨拶をしないで家を出ようとした。だが、戸をあけて階段の口へ出るやいなや、どこから来たのか、当のホフラーコワ夫人が眼の前に控えていた。最初のひとことを聞くと同時に、アリョーシャは、彼女がわざとここで待ち受けていたのであることを悟った。
「アレクセイさん、なんて恐ろしいことでしょうね。あれは子供らしいばかげたことですわ、無意味なことですわ、あなたはつまらないことを空想なさらないだろうと思って、わたしそれを当てにしていますのよ……ばかげたことですわ、ばかげたことですわ、全くばかげたことですわ!」と夫人は彼に食ってかかった。
「ただね、お願いしておきます、あの人にはそんなこと言わないようにしてくださいよ」とアリョーシャは言った。「でないと、あの人はまた興奮しますよ、今もあの人の体にとって、それがいちばんいけないことなのですからね」
「分別のある若いおかたの、分別のある御意見、確かに承知しましたわ。あなたが今あの子のことばに同意なすったのも、たぶんあの子の病的な体のぐあいに同情してくだすって、逆らいだてしてあの子をいらいらさせまいとのお心づかいからだったのですか、そう解釈してよろしゅうございますね?」
「いいえ、それは違います、まるで違います。僕は
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