してくださいと言って、もしあなたが平気でそれを出してお渡しになったら(あなたとしてはそれは全くありそうなことなんですもの)、つまり、あなたはわたしを愛してもいなければ、なんとも思っていないことになる。つまり、あなたはばかなつまらない小僧っ子で……そしてわたしの一生は滅びてしまうと思ったの――ところが、あなたは手紙を庵室へ置いてらしったので、わたしすっかりせいせいしたのよ、だって、あなたは返してくれと言われるのを感づいて、わたしに渡さないように庵室へ置いてらしったんでしょう? ねえ、そうじゃない?」
「おお、ところがそうでないんです、リーズさん。だって、手紙は今ちゃんと持ってるんです、さっきだってやはり持ってたんです。ほら、このかくしに、ね」
 アリョーシャは笑いながら手紙を取り出して、遠くの方から彼女に見せた。
「ただしあなたには渡しゃしないから、そこから御覧」
「え? じゃ、あなたはさっき嘘をついたのね。坊さんのくせに嘘をついたのね、あなたは!」
「あるいはそうかもしれません」とアリョーシャは笑って、「あなたに手紙を渡すまいと思って嘘をついたんです。僕にとって、これは非常に大切なものなんですからね」不意に強い情をこめてこう言い足すと、彼はまた顔を赤くした。「これは一生涯誰にも渡しゃしませんよ!」
 リーズはうっとりとして、彼を見つめているのであった。
「アリョーシャ」と彼女はふたたびささやいた。「ちょっと戸口をのぞいて見てちょうだい、お母さんが立ち聞きしてやしなくって?」
「よろしい、僕見てあげましょう。しかし、見たりしないほうがよくはないのじゃないかしら、なぜそんな卑しいことでお母さんを疑うのです!」
「なぜ卑しいことなの? どんな卑しいこと? 娘のことを心配して立ち聞きするのはお母さんの権利だわ、ちっとも卑しいことじゃなくってよ」とリーズはまっかになった。「前もってお断わりしておきますわ、アレクセイさん、わたしが自分でお母さんになって、わたしのような娘を持ったとしたら、わたしはきっと娘の話を立ち聞きしてやるわ」
「まさかねえ、リーズさん? でも、それは間違っていますよ」
「まあ、どうしましょう! なにも卑しいことなんかありゃしないわ! これが世間なみのお話しを立ち聞きするんだったら、そりゃ卑しいことに相違ないでしょうが、現在生みの娘が若い男と一間にとじこもるな
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