、どれほどつらい思いをしたか、とてもお察しはつきますまい、……だって、こんなことはどんなにしたって、手紙で言い尽くせるものじゃありませんものねえ、……でも、今になれば、楽に書けますわ。あなたが向こうへいらっしゃれば、すっかり説明してくださいますものね。ほんとに、こんな嬉しいことはありません! ですけれど、嬉しいのはただこれだけです、しつこいようですが、どうぞ信じてくださいまし。あなたというおかたはわたしにとって、かけがえのないおかたなんです、……さあ、今すぐにも、ちょっと家に帰って、手紙を書きましょう」と彼女はだしぬけにことばを結んだかと思うと、今にも部屋を出て行くかのように、一足ふみ出した。
「でも、アリョーシャさんは? あなたがぜひとも聞きたいと言ってらしたアレクセイさんの御意見は?」とホフラーコワ夫人は叫んだ。なんとなく皮肉な、腹立たしげな調子がその声の中に感ぜられた。
「わたし、それを忘れていませんわ」と急にカテリーナは立ち止まって、「あなたはなんだって、今の場合に、わたしをそう邪慳《じゃけん》になさいますの?」熱した、つらそうな調子で、彼女はとがめるように言いだした、「わたし、自分で言ったことは間違いなくいたしますわ! このかたの御意見はどうしても必要なんですの。それどころか、わたしこのかたの断定が必要なんですの! このかたのおっしゃることは、そのとおりに実行いたします、――ね、アレクセイさん、これほどまでにわたしは、あなたのおことばを聞きたくてたまらないのです、……でも、あなたはどうかなすって?」
「僕は今まで、こんなことを考えたこともありませんでした。こんなことは想像もできません!」不意に悲しそうにアリョーシャは叫んだ。
「え、なんですって?」
「兄さんがモスクワへ行くと言うと、あなたはそれを嬉しいとおっしゃるじゃありませんか、――あなたはわざとあんなことをおっしゃったのです! それからまたすぐに、いま嬉しいと言ったのは、まるきり別なことで、反対に、友だちを失うのが残念だなどと弁解し始めるじゃありませんか、――あれはわざと芝居をなすったのですね、……まるで舞台に立って、喜劇をなすったも同然です!」
「舞台ですって? なぜですの? いったい、それはどういうことですの?」カテリーナは顔をまっかにして、苦い顔をしながら、心の底から驚いて叫んだ。
「あなたがど
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