ヲないとでも思うのかえ?」
「けっしてそんなことはありません。僕はなんの気なしに……」
「うん、わしもやはりなんの気なしに……わしもただその……」と老人はわが子を見つめた、「おい、ちょっと」と、彼は後ろから声をかけた、「いつかまた近いうちに来るといい、魚のスープを食べにな。魚汁《ウハー》をこさえるから。今日のようなやつじゃなくって、特別のをな。きっと来るんだぞ! 明日は、きっと来い、よいか、来るんだぞ、明日は!」
アリョーシャが戸の向こうへ出て行くが早いか、彼はまた戸棚に近づいて、さらに杯に半分ほどつぐのであった。
「もうこれでおしまいだ!」とつぶやいて、喉《のど》をくっと鳴らしながら、またもや戸棚に鍵をおろすと、またその鍵をポケットにしまいこんで、それから寝室へおもむいて、ぐったりと床の上に横になると、そのまますぐに眠りに落ちてしまった。
三 小学生の仲間に
『やれやれ、お父さんがグルーシェンカのことを聞かなくてよかったわい』アリョーシャはまたアリョーシャで、父のところを出て、ホフラーコワ夫人の家に向かいながら、心の中で考えるのであった、『そうでなかったら、おそらく昨日グルーシャと会ったことを、話さなければならなかったろう』アリョーシャは二人の敵同士が昨晩のうちに元気を回復して、夜が明けるとともに再び石のようにいこじになったということを痛感するのであった、『お父さんはいらいらして、意地が悪くなっている。きっと何か考えついて、そのことを思いつめているのに相違ない。ところが、兄さんのほうはどうだろう? 兄さんもやはり、昨夜のうちに気分を持ちなおして、同じようにいらいらした意地の悪い気持になっているに相違ない。それに、もちろん、何かたくらんでるに相違ない。……ああ、どうしても今日の間に合うように、兄さんを捜し出す必要がある……』
しかし、アリョーシャは長くこんなことを考えているわけに行かなかった。途中で思いもよらない出来事が、彼の身の上に起こったのである。それは見たところはたいしたことではなかったが、彼に強烈な印象を与えた。小さな溝《みぞ》を隔てて(この町は至るところ溝川が縦横に貫通しているので)、大通りと並行しているミハイロフ通りへ出ようと思って、広場を通り抜けて横町へ曲がったとき、小さな橋の手前で一固まりになっている、小学生が眼にはいったのである。みん
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