激Nセイ・フョードロヴィッチ、まあその、ふっくらした小さな美しい手を御覧なさいよ、これはわたしに幸福を持って来て、わたしをよみがえらせてくれた手なんですよ。さあ、わたし今、この手を接吻しますわよ。外側も内側もね、ほうらね、もう一度! もう一度!」そして彼女は有頂天になったようにグルーシェンカの、まことに美しい、少しふっくらしすぎるくらいな手を、三度までも接吻した。相手はその手を差し出したまま、神経的で、ひびきの高い、美しい笑い声を立てながら、この『お嬢様』のすることをじっと見守っていたが、どうやら、彼女はそんな風に自分の手を接吻されるのが気持よさそうであった。『すこし有頂天が過ぎるようだ』という考えが、ちらりとアリョーシャの頭をかすめた。彼は急に顔を赤くした。その間じゅう彼の心は妙に落ち着かなかった。
「お嬢様、アレクセイ・フョードロヴィッチさんのいらっしゃる前で、そんな風に接吻なんかして、あたしを恥ずかしがらせないでくださいな」
「まあ、わたしがこんなことをしたからって、あなたに恥をかかせるつもりだとお思いになって?」カテリーナ・イワーノヴナは少し驚いたようにこう言った、「あなたはちっとも、私の気持をおわかりになってくださらないんですもの!」
「でも、あなただって、やっぱりあたしの気持が、本当にはおわかりになっていないらしゅうございますわ、お嬢様、あたしは、あなたの眸《ひとみ》に映ってるよりか、ずっと悪い女かもしれませんものね、あたしは肚《はら》の悪いわがままな女ですからね、あの可哀《かわい》そうなドミトリイ・フョードロヴィッチだって、ただからかい半分にちょっとあの時、迷わしてみただけなのよ」
「でも、そのあなたが今では、あの人を救おうとしてらっしゃるんじゃありませんか、あなたはそうお約束なすったでしょう――あなたがもうずっと前から、他の人を愛していらして、その人が現にあなたと結婚することになってるってことを、あの人に打ち明けて、眼をさましておあげになるって……」
「まあ、違いますってば。あたし、そんなお約束なんかした覚えはありませんわ、それはあなたがご自分で勝手にお話しになっただけなんで、あたしお約束なんかしませんでしたわ」
「それじゃ、わたし、勘違いをしていたんですわね」と、カテリーナ・イワーノヴナはちょっと顔色を変えて、声低くこう言った、「でも、あなたはお約
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