に何か犯罪めいた衝突が起こるかもしれないよ。ところが、君の兄さんのイワンはそれを待ち構えているんだ。そうなれば思うつぼにはまるんだからな。痩せるほど思っているカテリーナ・イワーノヴナも手にはいれば、六万ルーブルというあの女の持参金もたぐり寄せられようという肚《はら》だ。イワン君のようなすかんぴんにとって、これだけの金高は手始めとしてなかなか悪くないよ。おまけに、それがミーチャを侮辱しないばかりか、かえって一生恩に着られるというものだ。僕はよく知っている。つい先週ミーチェンカがある料理屋で、ジプシイの女たちといっしょに酔いつぶれたあげく、自分はカーチャを妻にする値打ちがないけれど、弟のイワンなら立派にその資格があると自分で大きな声でどなったんだもの、当のカテリーナ・イワーノヴナにしても、イワン・フョードロヴィッチのような誘惑者にかかっては、もちろん、しまいには兜《かぶと》を脱ぐに違いない。現に今でも、彼女は二人のあいだに立って迷っているんだからね。それはともかく、いったいイワンはどうして君らをそんなにうまく丸めこんでしまったのかしら、君らはみんなあの人を三拝九拝してるじゃないか? ところが、あの人は君らをせせら笑ってるんだぜ、願ったりかなったりだ。おれはおまえたちの勘定で御馳走になりますってね」
「だが、どうして君はそんなことを知ってるの? どうしてそうきっぱりと言いきるの?」アリョーシャはこう鋭く、眉をひそめながら、不意に尋ねた。
「じゃあ、なぜ君は今そう言って尋ねながら、僕の返事を恐れてるんだい? つまり僕の言ったことが本当だってことを承認してるんじゃないか?」
「君はイワンが好きじゃないんだね。イワンは金なんかに迷ってやしないよ」
「そうかしら? しかしカテリーナ・イワーノヴナの美貌はどうだね? 金だけが間題じゃないんだよ。もっとも、六万ルーブルといえば、まんざら憎くもなかろうがね」
「イワンはもっと高いところに目をつけてるよ。イワンは何万あろうとも、金なんかに迷わされはしない。イワンは金や平安を求めてはいない。たぶん苦痛を求めてるんだろう」
「それはまたなんという夢だろう? ほんとに君たちは……お殿様だよ!」
「ううん、ミーシャ、兄の心は荒れてるんだよ。兄の頭は囚われているんだ。イワンの考えている考えは偉大だが、まだ解決がついてないのだ。イワンは幾百万の金より
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