風にしてリマンといふ湾のある所へ出ました。この湾の水は常に鹹《しほから》いのですが、時々黒竜江の水が押して来ると、淡水になつて、飲む事が出来るのです。こゝからボオトに乗つて出れば、黒竜江へ這入られるのです。
どうしてボオトを手に入れようかと相談したところが、老人はもう疲れ果てゝ、目がどんよりしてゐて、なんの智慧も出ないのです。それでもとうとうかう云ひました。
「どうせボオトは土人の持つてゐるのを手に入れるのだ。」
これだけの事は云ひましたが、その土人をどこへ捜しに行つたら好いか、又土人の手から船を得るには、どういふ手段を取つたら好いかといふ事は、老人が教へてくれません。
そこでヲロヂカとマカロフとわたくしとで、同志の者にかう云ひました。
「おい。皆の者はこゝで待つてゐてくれ。己達はこの岸に沿うて歩いて見る。為合《しあは》せが好かつたら、土人を見付けて、どうにかしてボオトを手に入れようと思ふ。二三艘もあれば結構だがさう行かなければ、一艘でも手に入れるやうにしよう。みんな用心してゐるのだぜ。この辺にも警戒線が布《し》いてあるかも知れないから。」
かう云つてみんなを残して置いて、わた
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