ャ社会と云ふものは、大抵左の四種類の人物から成り立つてゐた。多分今でもこれから後でも同じ事だらう。その種類は第一が財産のある貴顕である。第二は貴顕の間に生れて育つたゞけで、財産のない人々である。第三は貴顕の間に割り込まうとしてゐる財産家である。第四は貴顕でもなく、財産家でもないのに、強ひて貴顕や財産家と同じ世渡をしようとしてゐる人達である。
第一第二の階級には、ステパンは這入る事が出来ない。ステパンは第三第四の仲間から歓迎せられる丈である。さてその仲間に這入つてから、ステパンはまづ貴夫人のどれかに関係を付けようと企てた。併しそれは間もなく出来て、然も余り容易に出来たので我ながら驚いた。
さて暫くして気が付いて見ると、自分の交際してゐる社会は決して最上流ではない。それより上に別天地がある。その別天地では随分喜んで自分を請待してはくれるが、どうしても他人扱にしてゐる。勿論自分に対してその人々の言つたり、したりする事は丁寧で親密らしくは見える。併し矢張仲間としては取扱つてくれない。そこでステパンはその仲間に入らうと企てた。それには二つの途がある。一つは侍従武官になる事である。これは早晩出
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