やっつけてやろうと考えたのです。
「一つ私はあなた様にいいことをしたいと思います。よい智慧をおかししたいと存じます。で、まずお国に家を一軒たてて、商売をはじめましょう。」
と年よった悪魔は言いました。
「いいとも、いいとも。気に入ったらこの国へ来て暮してくれ。」
とイワンは言いました。
翌くる朝この立派な紳士は、金貨の入った大きな袋と一枚の紙片《かみきれ》を持って広小路へ出て、こう演説しました。
「お前たちはまるで豚のような生活をしている。私はお前たちにもっといい暮し方を教えてやる。お前たちはこの図面を見て一つ家をこさえてくれ。お前たちはただ働けばよろしい。そのやり方は私が教え、おれいは金貨で払ってやる。」
そう言ってかれは金貨をみんなに見せました。馬鹿な人民たちはびっくりしました。かれらの間には、これまで金と言うものがありませんでした。かれらは品物と品物を取かえ合ったり、仕事は仕事でかんじょうし合っていたのでした。そこでみんなは、金貨を見て驚きました。
「まあ、何て重宝なもんだろう。」
と言いました。
それで、かれらは品物をやったり仕事をしたりして、紳士の金貨と取っかえはじめま
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