を焼き、牛馬をみんな殺してしまえと命令しました。そして、
「もしもこの命令に従わない者は残らず死刑にしてしまうぞ。」
と言いました。
 兵隊たちはふるえ上って、王の命令通りにしはじめました。かれらは、家や穀物などを焼き、牛馬などを殺しはじめました。しかし、それでも馬鹿たちは抵抗《てむか》わないで、ただ泣くだけでした。おじいさんが泣き、おばあさんが泣き、若い者たちも泣くのでした。
「何だってお前さん方あ、わしらを痛めなさるだあ、何だって役に立つものを駄目にしなさるだあ。欲しけりゃなぜそれを持って行きなさらねえ。」
と人民たちは言うのでした。
 兵隊たちはとうとうがまんが出来なくなりました。この上進むことが出来なくなりました。それで、もういうことをきかず、思い思いに逃げ出して行ってしまいました。

        一二

 年よった悪魔はこの手段を止《よ》す外《ほか》ありませんでした。兵隊を使ったんじゃ、とてもイワンを取っちめることは出来ませんでした。そこで今度は姿をかえて、立派な紳士に化けて、イワンの国に住みこみました。かれは肥満《ふとっちょ》のタラスをやっつけたように、金の力でイワンを
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