りませんが、穀物でも牛馬《うしうま》でも、その他何でもどっさりあります。」
そこでタラカン王は戦のしたくに取りかかり、大へんな軍隊を集めて、銃や大砲をよういすると、イワンの国へおしよせました。
人民たちは、イワンのところへかけつけてこう言いました。
「タラカン王が大軍をつれて攻めよせて来ました。」
「あ、いいとも、いいとも。来さしてやれ。」
とイワンは言いました。
タラカン王は、国ざかいを越えると、すぐ斥候を出して、イワンの軍隊のようすをさぐらせました。ところが、驚いたことにさぐってもさぐっても軍隊の影さえも見えません。今にどこからか現われて来るだろうと、待ちに待っていましたが、やはり軍隊らしいものは出て来ません。また、だれ一人タラカン王の軍隊を相手にして戦するものもありませんでした。そこでタラカン王は、村々を占領するために兵隊をつかわしました。兵隊たちが村に入ると、村の者たちは男も女も、びっくりして家《うち》を飛び出し、ものめずらしそうに見ています。兵隊たちが穀物や牛馬などを取りにかかると、要るだけ取らせて、ちっとも抵抗《てむかい》しませんでした。次の村へ行くと、やはり同じこと
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