あれじゃとてもやりきれない。退屈で、おまけにからだがぶくぶくに肥《ふと》って来るし、食物《たべもの》はまずく、寝りゃからだがいたい。」
とイワンは言いました。そして両親や唖の妹をつれて来て元のように働きはじめました。
「あなたは王様でいらせられます。」
と人民の者が言いました。
「そりゃそれにちがいない。だが王様だって食わなけりゃならん。」
とイワンは言いました。
そこへ大臣の一人がやって来て言いました。
「金がないので役人たちに払うことが出来ません。」
「いいとも、いいとも。なけりゃ払わんでいい。」
とイワンは言いました。
「でも払わないと、役についてくれません。」
「いいとも、いいとも。役につかないがいい。そうすりゃ、働く時間がたくさんになる。役人たちに肥料《こやし》を運ばせるがいい。それに埃《ごみ》はたくさんたまっている。」
そこへ人民たちが、裁判してもらいにやって来ました。そして中の一人が、言いました。
「こいつが私の金を盗みました。」
するとイワンは言いました。
「いいとも、いいとも。そりゃこの男に金が要ったからじゃ。」
そこで人民たちはイワンが馬鹿だと言うことに気が
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