じゃ二人でイワンのところへ行こうじゃないか。あれに言っておれはもっと兵隊をこさえさせて、それにお前のお金の番をさせる。またお前はもっとあれに金をこさえさせてもらってそれでおれの部下に食べさせればいい。」
 そこで二人は、イワンのところへ行きました。そして兵隊のシモンは、イワンにこう言いました。
「ねえイワン、おれのところには兵隊がもっとたりない。もう二三|把《わ》分こさえておくれ。」
 イワンは頭をふりました。
「いいや、わしはもう兵隊はこさえない。」
とイワンは言いました。
「でもお前はこさえてやると約束したじゃないか。」
「約束したのは知っているが、わしはもうこさえない。」
「なぜこさえない、馬鹿!」
「お前さんの兵隊は人殺しをした。わしがこの間|道傍《みちばた》の畑で仕事をしていたら、一人の女が泣きながら棺桶を運んで行くのを見た。わしはだれが死んだかたずねてみた。するとその女は、シモンの兵隊がわしの主人を殺したのだと言った。わしは兵隊は唄を歌って楽隊をやるとばかり考えていた。だのにあいつらは人を殺した。もう一人だってこさえてはやらない。」
 こう言っていつまでもがんばって、イワン
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