魔は言いました。
「そりゃいけない。」
とイワンは言いました。
「おれは兵隊を打殻《うちがら》の藁でこさえるのでなくちゃいやだ。でないと折角のいい麦がだめになってしまう。これをもとの麦束に返す方法を教えてくれ。おれはこれから麦を落そうと思っているんだ。」
 そこで小悪魔は言いました。
「それはこうです。
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私の家来に命《い》いつける
兵隊よ兵隊よ、
元の藁に飛んでかえれ。」
[#ここで字下げ終わり]
 イワンがこう言うとまた麦の束になりました。そこで小悪魔はたのみ出しました。
「どうぞ、はなして下さいよ。」
 イワンは、
「いいとも、いいとも。」
と言って、小悪魔を荷車の横へ押しあてると、片手でおさえながら熊手から引っこぬいてやりました。
「神様がお前をお守り下さるように。」
とイワンは言いました。
 イワンが神様の名を口にするかしないかに、小悪魔は水に落ちた石のように地べたへ消えてしまいました。そして後には小さな穴が一つだけ残りました。
 イワンは家《うち》に帰りました。家《うち》に帰ってみると、次の兄のタラスと、そのおかみさんが来ていて、晩飯を食っていました。
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