描写したいと苦心しています。
私は最初、これを丸髷の若奥さまとして描写してみたのですが、若夫人では、すでに袖の丈《たけ》がつまっていますからあの袖を、腕の上に巻き返した格好、あれが出来ませんから、あらためて、袖の長い令嬢にしたのでした。仕舞で、袖を上に巻き返したあの格好、あれはとてもいい姿だと思います。
この図を思いついたのは、私がときどき仕舞拝見に出向いたおりに、よく令嬢や若夫人たちが舞っているのを見かけることがありますので、そこにふかい興味をもったからでした。
○
先年、ある作家の描いた仕舞図がありましたが、その図を見ますと、その扇の持ち方に不審な点がありましたので、私はそれを金剛巌《こんごういわお》氏にきいてみたのでしたが、金剛氏は「それはいけませんな、そんな持ち方などしたら、叱られますよ」といっていられました。
しかし、それは他事《ひとごと》ではありません。今度は私自身がその仕舞図を描くことになったのですから、そんな前車の轍《てつ》をふまないように注意しなくてはいけないと思って緊張しているのです。
仕舞というものは、名人の話によりますと、小指と足の
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