幼き頃の想い出
上村松園
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)蹲《うずくま》って
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]
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古ぼけた美
東京と違って、京都は展覧会を観る機会も数も少のうございますが、私は書画や骨董の売立のようなものでも、出来るだけ見逃さないようにして、そうした不足を満たすように心掛けて居ます。そうして、そのような売立なぞを観に参りまして、特に興味を惹かれますのは、評判の呼び物は勿論でございますが、それよりも片隅に放擲されて、参観者の注視から逸して淋しく蹲《うずくま》って居る故も解らぬ品物でございます。そこに私はゆくりなく慎ましい美を発見するのでございます。たとえばその昔女郎の足に絡《まと》わって居た下駄だとか、或いは高家の隠居が愛用して居た莨入《たばこいれ》だとか、そういったトリヴィアルなものに、特殊な床しい美が発見されるのです。そこにも又尊い芸術の光
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