の副総裁である田さんや夫人や秘書の方々と一緒であった。東京から上海へゆかれるので一緒に京都の駅で落ち合って出発したのであった。船の中では私はその人たちと一緒ににぎやかに語り合いながら海をつつがなく渡ってしまったわけであった。静かな航海であった。昼食はそれでも船の中で終えて、それから上陸すると上海北四川路にある新亜細亜ホテルに落着いた。それから皆と一緒に上海の街を自動車でみてまわることになった。租界の外なぞもみてまわった。

        上海素描

 上海というところをずっと一巡したあとの印象はどう表現したらいいのであろう。とにかくとても賑やかなところである。
 そのくせ街幅は東京の銀座などのような広さはなくて、妙に狭いという感じがする。その両側に店が並んでいる。街路の真中を二階つきのバス、自動車、人力車などが通っているし、両側は人、人、人でいっぱいにつまっている。それが混然雑然としてとてもにぎやかであった。
 ちょうど三度ほどそうして市中を自動車で走りまわって、フランス租界のところで降りて、大きなデパートすなわち永安公司があるので、そこへはいってみたりしたのであった。
 そうして私
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