から蘇州へ行った。叭叭鳥や鵲の群れて飛ぶのんびりした景色を汽車の窓から眺めていた。童子が水牛にのってのどかに歩いているところや、羊が点々と遊んでいるところなどがみられた。百姓家があったり、家が潰れかかっているさまも却って雅趣がみえて嬉しかった。小川があると、支那の田舎娘が菜を洗っている。どの畠にもお墓の土饅頭が点在するのであった。
だがまたしても思う……何という支那は大きな国であろう、土地の広大をのみいうのではない。
汽車は大きくて、中がゆったりとして乗心持もよかった。
蘇州の寒山寺は別していい寺というほどのこともないが、この寺の向こうには有名な楓橋があって、その橋の上から見下ろしておもいをはせれば、楓橋の夜泊、寒山寺の鐘啻《しょうてい》ひびきわたるところ「落月鳴烏霜満天……」の詩が生まれたのも宣《むべ》なるかなと思ったが、この辺の景色がいい。
蘇州の獅子林をみたが、ここは太湖石が沢山あって、ずいぶんと広い庭園であった。
太湖石は絵ではみていたが、真物は絵とはよほど変っていた。第一、太湖石は素晴しく大きなものである。それに真物は絵とちがって黄土色を呈しているのである。
獅子
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