ろいろと着つけをして貰っている花嫁の、恥ずかしい中に嬉しさをこめて、自分の体をそれら親類の女たちにまかせている姿をみて、全くこれは人生の花ざかりであると感じました。

 そこで、その日の光景を絵絹の上へ移したのですが、華やかな婚礼の式場へのぞもうとする花嫁の恥ずかしい不安な顔と、附添う母親の責任感のつよく現われた緊張の瞬間をとらえたその絵は――明治三十三年の日本美術院展覧会に意外の好評を博し、この画は当時の大家の中にまじって銀牌三席という栄誉を得たのであります。

 正に私の花ざかりとでも言うべき、華やかな結果を生んだのでした。
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 (授賞席順)
金牌  大原の露    下村観山
銀牌  雪中放鶴    菱田春草
    木蘭      横山大観
    花ざかり    上村松園
    秋風      水野年方
    秋山喚猿    鈴木松年
    秋草      寺崎廣業
    水禽      川合玉堂
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 恩師鈴木松年先生が、自分の上席に入賞した私のために、最大の祝詞を送って下さいましたことを、私は身内が熱くなるほど嬉しく思い
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