絵筆に描き残す亡びゆく美しさ
上村松園

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)薄《すすき》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き](昭和九年)
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 京の舞妓の面影は、他のものの変り方を思えば、さして著しくはありませんが、それでもやはり時代の波は伝統の世界にもひたひたと打ち寄せているようです。髪の結方とか、かんざしとか、服装の模様とかが、以前に比べると大分変って来ています。髪なんか、昔の純京風は後のつとを大きく出して、かたい油つけをつけたものですが、近ごろは、つとも小さくなり油つけもつけないでさばさばした感じのものになってしまいました。
 かんざしも夏には銀製の薄《すすき》のかんざしをさしたもので、見るからに涼しげな感じのものでした。今も銀の薄のをさしてはいますが、薄の形が変って来て、昔のように葉がつまっておらず、ばらばらになってきています。服装の模様なども昔は裾模様のようなものが多く、一面に友仙のそうあらくないのをしていましたが、近ごろは大変柄があらくなってきました。
 私は、明治の初めから十五、六年ごろの風俗を細微に
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