散なん
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あれ等に分るか知らん、自分で豪傑がるのは、実に見られないよ、おれ等はもう年が寄つた。
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たをやめの玉手さしかへ一夜ねん
夢の中なる夢を見んとて
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政治家も、理窟ばかり云ふやうになつては、いけない、徳川家康公は、理窟はいはなかつたが、それでも三百年続いたよ。それに、今の内閣は、僅か卅年の間に幾度代つたやら。
全体、今の大臣等は、維新の風雨に養成せられたなどと大きな事をいふけれども、実際剣光砲火の下を潜つて、死生の間に出入して、心胆を練り上げた人は少ない、だから一国の危機に処して惑はず、外交の難局に当つて恐れないといふほどの大人物がないのだ。先輩の尻馬に乗つて、そして先輩も及ばないほどの富貴栄華を極めて、独りで天狗になるとは恐れ入つた次第だ。先輩が命がけで成就した仕事を譲り受けて、やれ伯爵だとか、侯爵だとかいふ様な事では仕方がない。
世間の人には、もすこし大胆であつて貰ひたいものだ。政治家とか、何んとかいつても、実際骨のあるものは幾らもありはしない。大きく見積つても六百位のものサ。然るに、今の
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